テーラーメイド治療を目指す神戸三宮の菊地眼科です

コラム集 人が見たことない色「olo」? 2025.06

アメリカの研究者チームがレーザー光線で網膜を刺激して、今まで人間が見たことのない色を知覚させることに成功したそうです。 研究チームはこの色を「olo」と名付けました。
網膜には明るさや色を知覚する視細胞は2種類あり、錐体細胞、桿体細胞と呼ばれています。 錐体は網膜の中心付近に分布し、明るいところでの色覚や視力に関係してます。 桿体は網膜の周辺部にあり、色の区別はできませんが、暗い環境での視覚に貢献しています。
錐体はさらに3種類あり、それぞれS錐体、M錐体、L錐体と呼ばれています。 応答できる光の波長がshort(短波長)のS、middle(中波長)のM、long(長波長)のLです。 S錐体は青色、M錐体は緑色、L錐体は赤色を知覚します。
自然界ではいろいろな色がありますが、S、M、L錐体どれか1つだけ単独で刺激され、他の2つの錐体が全く刺激されない環境はまずありません。特にM錐体は中波長なのでS錐体とL錐体と応答範囲が重なっていて、単独で刺激されることはありません。
そこで研究チームはOz(オズ)と名付けたシステムを用いて、M錐体のみをパルスレーザーで刺激することに成功したそうです。 網膜のどこにM錐体があるかを特定し、さらに眼球運動による位置のずれを補正しながらの実験なので本当に精密・繊細な技術だと思います。
このパルスレーザーでoloを体験した人は「青緑」、「緑、少し青みがかった」という表現をしたそうですが、特徴的なのは「体験したことない高い彩度」だそうです。 これを新しい色としていいかどうかは見解が分かれているそうです。私も人工的に見せた色なので新色というには少し抵抗がありますが、将来的に色覚異常の研究・治療につながればいいなと思っています。